格闘ゲーム作画に特化したドット絵講座

格ゲー作画に必要な技術について

 絵を描いていて「何か変なのはわかるが、どこが変なのかわからない」という思いをしたことありませんか?
 いや、一度もないねという天才さんを捜すほうが難しい話ですね。
 誰もがつまずく問題だし、つまずき方が祟ればそれでその人の絵の道は終わりです。
 なぜそんなことがおこるのか。それへ対処するにはどうすればいいのか。
 この項ではその辺を記してみたいと思います。

 人体は骨を中核に筋肉が覆い、皮膚がまとってできあがっています。
 この程度のことは、学校の授業はじめいろんな媒体からの情報として知っていることでしょう。

 では、もうすこし突っ込んで考えてみてください。
 人体のなかでも知名度のある筋肉、通称「力こぶ」こと、上腕二頭筋が腕のどこから始まってどこで終わっているかはわかりますか。
 もっというなら、腕を下ろしたとき、水平にしたとき、或いは腕を上げたとき、それが腕のどの位置に来てどんな形に変化するかわかりますか?

 まあ、知らねえよというのが当然の答えです。
 普通に生きていて、そんな知識を身につけることなんてありませんよね。
 ようは、これだけ名の知れた部位であっても、存在以上の知識となると人はかくも体の造りを知らんのです。

 しかし実はこれを知識として知っていないと、腕を腕らしく描くことはできないものなのです。

 わかりやすい例えを出すなら顔。
 目、鼻、口といったパーツが正しい位置に正しい向きでついていないとおかしく感じるものでしょう。
 腕における目、鼻、口にあたるのが、筋肉の膨らみや骨の突起であり、それは全身の各部位にそれぞれ存在しています。
 それが正しく描き分けられていないと絵の上に違和感としてでてきます。

 しかしそんなもの知らなかろうが、描こうとすれば描けない事はない。
 理屈としては変な話ですけどね。

 これは人の創造力が厄介に働いている為で、人間は知らないものでも(この場合は腕の構造に対する知識がなくても)これまでの経験や知識を元に脳内で勝手に「それっぽい」ものを「テキトー」に造りだすことができるのです。
 英語を喋れない人でも、洋画やTVで見知ったイメージを元にそれっぽい音の綴りを口にすることができるのと同じです。
 しかしそれは所詮は嘘とテキトーの産物。
 英語っぽい嘘喋りが言葉としては通じないのと同じに、頭の中ででっち上げた腕っぽいなにかを元に書いた絵では、見る人に腕として納得させるだけの説得力を持たしえません。
 まして自分で絵を描こうとするような人は、元々イラストの好きな人。
 巧い人の絵を見て目が肥えているから直感的に違和感を嗅ぎ取る嗅覚は育っているものです。

 つまりはこれが、最初にあげた事象の理由です。
 何かが変だと感じる絵ができてしまうのはあなたの頭が勝手に造りだした嘘物を描いているからであり、どこが変なのかわからないのは、人体の構造に対する知識がないから、なにが間違っているのか判別ができないからです。

 これを矯正し、正しい肉体を違和感なく描きあげるようになるにはどうすればよいか。
 人体の構造を、徹底的に、妥協なく頭と手先に刷り込むしかないと考えます。
 人を描くために必要な知識が頭に入っていれば、現実的にありえないポーズや形が描きあがることはないし、狂いが生じていたとしても、知識に照らして狂ったところを修正していけます。
 正しい人体を意識した作画を繰り返し続けることで次第に、手が描き方を覚えて整った形で描いていけるようにもなります。

 これは、センスや天性の才能によるところでなく、勉強と修練によって磨けば身につく技術です。
 記憶と反復によって覚える知識ですから、それそこ言語の習得に似ているかもしれませんね。

 格ゲー作画で上達を目指すなら習得するべき技術だと思います。
 無論、習得はそれなりに大変で一朝一夕にものになるものでもありません。
 それにMUGENはあくまで趣味の世界。
 作画が拙かろうと、それを理由に制作活動を否定する権利は誰にもありません。
 だから必修事項ではないし、製作者個人がそれを、労力を費やしてまで収めるべき価値ナシと判ずれば、それはその人の製作スタイルなのです。
 まあ、私自身この結論に至るまで、7、8年近く無視してきた事柄なんで別に身につけなくてもやっていけるということは保障できます。
 一方で、もう少し早く始めてりゃあ、今頃もっとマシな絵が描けてるだろうにと後悔しきりな事柄でもあります。

 もっとも、私自身、身についてる技術はご覧の程度のものですし、いまだにことあるごとに資料と首っ引きにならざるをえないレベルなんで偉そうなこと言えたものでもありませんが、それでもこれから始めようとする人にその重要性を訴えることは意味があるのだと思ってます。

 あくまで個人的な結論ですが、格闘ゲームのキャラを作画することにおいて、人体デッサンを身につけること以上に重要なことなどないと思います。
 色の置き方だとか、描き方の法則性といった要素も確かにありますが、そんなものは瑣末なもので、重要度の割合的には1割に満たない程度のものではないでしょうか。

 格闘ゲームの作画講座というのが、そんなにないというのは、それはそのまま人体作画講座のそれと変わらないからなんじゃないかと思います。
 だからといって、人体作画講座の内容を読んだところで、それがそのまま格闘ゲーム作画に役立つわけでもありません。
 人体作画の知識は、それだけで専門書何冊にも及ぶ膨大なものですから、一からやってたら時間などいくらあっても足りません。
 それにスポーツだって、入門書を読んだだけで巧くなるはずもないわけですから、実践が伴ってないと効果はありません。
 必要なのは格闘ゲーム作画に役立つ内容の選定と技術を磨くための鍛錬の方法だと思うのです。

 そこで、今後この項では、自分がこれまでやってきて、効果的だったと思える訓練法や資料などを、サイト、本、漫画、アニメ、ゲームなど、ジャンルに問わず紹介していきたいと思います。


 とりあえず今回は、その初回ということで、まず抑えておきたいサイトについて紹介したいと思います。

ポーズマニアックス

 

 人体作画の練習にはこのサイトの内容は全部役に立つんですが、なかでも30秒ドローイングというコンテンツはいかにも訓練(といより修行?)っぽくてユニークです。
 フラッシュをスタートさせると30秒ごとに人体図が表示されるので、それを時間内にスケッチしていく訓練です。
 必要な道具は紙と鉛筆のみ。描きやすい大きさで自由に描いてかまいません。やり方としては人体図の輪郭のラインを捉える感じで、一筆書きのようなやりかたでないとたいがい間に合いません。
 毎日朝夕10分づつが理想だとか。
 訓練の目的としては、瞬間的に造形を捕らえる瞬発力を鍛えることと、初心者には絶対的に不足している作画量不足を補うという意味があるそうです

 スポーツで言えばランニングや腕立てのなどの体力づくりのようなものですかね。
 正直コレをやったからこれぐらい描けるようになったというのはわかりませんが、この訓練を一年近く続けた上で今程度描けるようになっているのは確かです。


KITAJIMAのお絵描き研究所


 マッスル講座の資料性は、並みの本よりよほど優れています。差し込まれているイラストのおかげでエンターテイメント性も高い。
 特に役立つのが、部位の稼動と筋肉の動き方をあらわしたGIFアニメーションです。本ではどうしてもつかみ難い稼動した場合の見え方の変化が一目瞭然でつかめます。
 イラストも巧いし、その人体構造へのこだわりには頭が下がります。
 自分に必要なのは、この徹底したこだわりなのだという気がしてきます。



 今後は、様々なジャンルから、作画資料という点で役に立つ物なども紹介していきたいと思っています。
 皆さんの知る中でも、これは資料として役に立つというものがあったら教えて戴きたいと思います。
 自分も今だ未熟者ですから、教えると同様に教えられる事で、より巧い作画をしていけるようになりたいなと思っています。