格闘ゲーム作画に特化したドット絵講座

作画準備:作画色の設定

 モデルとする規格を決めたら次に使用するキャラの色をつくります。

 MUGENは基本、色数制限などないに等しい環境ですが、ことドット絵に関しては色が多く使える事と綺麗に描ける事はイコールではないし、慣れないうちからアーケードゲーム並みの色数を使いこなそうとしても、持て余すと思います。
 というか、持て余していたというべきか…

 まあ、そういった過去を踏まえて、現在、桝久堂ライダー規格で使用する色数は原則16色(透過色含む)としています。
 あくまで原則であって、多くの色を必要とするキャラの場合、固執はしませんが、ドット絵作画という技術自体、色数制限ありきの状況から生まれた作画法ですから、基本的には守るようにしています。
 この透過色含む16色という塗り方は、古くはスーパーファミコンの世代に始まり、現在においてはDSのゲームなどでも使われているそうです。
 市販ゲームでも採用されている基準ですから、それなりに綺麗に見えるし、アーケード基準ほどの複雑な塗りにもならないので、作業的に早く仕上げられます。
 個人的には一日最低一枚をノルマとしており、趣味に使える限られた時間制限の中で、作業速度とある程度のクオリティを両立させられるのというのがこの基準を採用している理由です。

 それではEDGEを使った個人的なパレットの造りかたを図説していこうと思います。
 造り方自体は個人的なやり方なのでできるだけ追いますが、パレットの移動操作等EDGEの扱いそのものについては省略しますので、その辺の疑問は、解説サイト等を参照してください。

 ここではディケイドのパレットと立ち絵を例に解説していきます。
 上段図ではEDGEのカラーパレットを使った色の造りかた、下段図の立ち絵はその色の役割を解説したものです。



手順1 メインカラーの設定


パレット設定1

 まず最初に製作する対象のキャラに使われている色を全て抜き出します。
 ディケイドであれば、キャラカラーのマゼンタ、目の色である緑、スーツの黒と白の4色となります。先頭の青は透過色です。

 これらの色は基準となる色です。
 あなたの思うそのキャラクターの最もそれらしいと思う色をそれぞれ選んでください。
 自分で作るもよし、イラスト、写真などから抽出するもよしです。

 一応、黒と白に関しては、255.255.255の白と0.0.0の黒の使用は避けるのが一般的のようです。

単色ディケイド

 これは一度完成したものを単色化したものなので整いすぎではありますが、作画の際には、こうした単色でそれぞれのパーツを塗りわけした状態をつくります。



手順2 影色の設定

パレット設定1  

 次にメインカラーに対して影の色を設定します。
 チョイと暗すぎると思えるぐらいがちょうどいいです。
 パレットをずらす際、真ん中をひとつ空けておきます。


2色ディケイド

 メインカラーと影色をつけた状態。
 見栄え的にはこれだけでもそんなに悪くないでしょう?
 比率的には主4:影6ぐらいですかね。
 黒以外はメインカラーに対して影の色ですが、黒のみは主線としてつかうので最初に一番暗い色を設定し、次に明るい色を設定していきます。




 

手順3 中間色の作成


中間作成  

 次に中間色を作成です。メインカラーから影色までのパレット3つ分をを選択した状態で左クリック。
 メニューを表示し、グラデーション作成を選択してください。




手順4 中間色の適応


中間色パレット設定

 すると、メインカラーと影色の中間にあたる色が作成されます。この色はメインカラーと影色の中間に置くことで、境界をマイルドにする役割です。

12色ディケイド

 中間色を適応した状態。影色の一ドット分を塗り変えました。
 使用色はそれぞれに3色の12色ですが見栄え的にはもうほとんど完成版と変わりません。
 比率は主4:中:1:影5ってところでしょうか。
 これは桝久堂規格の比率なので作画される際は個人のお好みで色々変えてみるのも個性になると思います。




 一系統の色に5色、6色と使うようなアーケードクオリティの色分けでも、基本はこのメインカラー、影色、中間色からの派生で造れると思うのです。
 例えばメインカラーよりさらに明るい色を創って光沢色にしたり、桝久堂では黒主線で作画している部分を、影色よりさらに濃い色を設定して主線色としたり(主線色を設定するのが一般的ではありますね)さらにそれらとの中間色を設定したりと増やそうと思えばキリなく増やしていけます。
 とはいえ、人型のキャラクターであれば、最大の幅であっても16ドット前後の厚みしかないわけで、それに対して5色6色というのは個人的感覚としては多いです。
 均等に塗れば良いというわけでもない(むしろそれは駄目な塗り方)ですし、感覚的なものですから、少なくともこれから始めるような初心者にはお勧めできません。
 まったくの初心者から始めるという場合なら、まずこのメインカラー、影色、中間色の各色3色設定で始めてみるのが良いのではないでしょうか。
 この状態でもアニメ絵調の十分に見栄えする塗りになりますし、塗りわけの練習にもなるからです。
 ある程度上達して、物足りなさを感じてきた場合も、この状態からなら、好みに応じて増やした色数を適応していくことのできる融通のきく状態といえます。

 では、最後に、ディケイドのパレットを最終的にどう振り分けたかを解説しておきます。



パレット設定4

 マゼンタ4色、緑3色、黒3色、白5色

 マゼンタは、黒主線と影色の中間色に当たる暗色を1つ追加。
 目の緑は塗る範囲自体が非常に少ないので3色のみ。
 黒は明るくしすぎると灰色に近づくのでそうならない程度の暗さの中で色の違いがわかるよう3色のみ設定。
 逆に白は明度の差が出やすいので、多めに5色とりました。
 もっとも、白の最も暗い色はかない濃い灰色なので黒の最も明るい色として使うことも出来ます。
 黒から白へのグラデーションとして8色という捉え方でも間違いではないですね。

12色ディケイド12色
16色ディケイド16色

 こうして並べてみても、パッと見では違いがわかりませんね。
 個人的な傾向として暗めの色を増やして、メリハリが出るよう画策するんですが、まあこの辺は、各人の好みでいいと思います。独自の特色と工夫を凝らしてみてください。




 以上の二点が製作を始める上で、まず知識として知っておくに越したことはないと思う事柄です。
 これぐらい押えて始めていけば、技術の向上に伴って過去絵を修正することになっても、かかる労力を減らせる下地ができると思います。

 実はこうして知識として書き出す事の出来るものってあんまりないんですよね。
 格闘ゲームに特化したドット絵講座っていうのがあまりないのはそのせいだと思うのです。
 次回にはその辺の突っ込んだ内容を取り上げたいと思います。